戒厳の牛

少女は、冷たく赤い薔薇の花を手にしていた。 その香りを追いかけるようにしてあの暗い路地に入ってしまった僕はまだ、この小さな世界を抜け出せずにいる。 灰色の空にサイレンが鳴り響く……僕らが負けた戦争が、この世界では今始まろうとしている。僕は駅のホームでそれを聞きながら、ラジオのダイヤルを回す。DJヒロヒトの放送は……まだ始まらないようだ。 電車は来ない。いつの間にか隣に座っていた牛は、まずそうに煙草をふかしている。目を閉じると、紫煙に混じって、ガソリンの臭いが鼻を突く。B-29だ。 昭和99年、戒厳令の敷かれた戦争前夜。僕は電車を待っている。
コインランドリーベイビー、ケン
ケンはコインランドリーの乾燥機の中で育った。真っ暗な乾燥機の中で彼はずっと回っていたのである。 うちの実家はコインランドリーを営んでいます。この話はうちのコインランドリーで7年前に実際起こった事件をもとにしています。なぜ母親は我が子をコインロッカーでなくコインランドリーに捨てたのか…今でも実家に帰るとその話ばっかりです。鍋をつついても、うどんをすすっても、行き着くところはその話題です。そしてその話になると、皆例外なく爆笑します。おとんもおかんも姉も僕もみんな爆笑します。今や7歳になるコインランドリーに捨てられていた当の本人(今は僕の弟です)も、一層大きな声で爆笑します。彼は少しアホなのです。そんな風に上坂家の夜はふけていきます。
羊と水或は対蹠点の錨(アンカー)或はぼんやりとした骨が見た或は組み紐A
過去に多く使われてきた視点や手法、そのイメージには使い古されているが故の“ブレ”があります。その“ブレ”を照射し利用することが私の方法論ではないか、と最近思うようになりました。 青臭い映画です。芸術は多様な問題を扱いますが、「命」を見つめることがその本分ではないかとの思いがやはり頭から離れません。そして私の愛する「映画」とは何者か、その姿はなんだか縹渺としています。今回の上映会にも似非芸術・似非映画が紛れ込んでいることでしょう。私の芸術・映画がどうか真摯でありますように
箱ピアノ
かつて日本で富の象徴として流行したピアノ。アップライトピアノ(箱ピアノ)の発売で流行は中流家庭にも広まり、日本の4割の家庭に普及した。しかし今日の日本のピアノは、「ピアノ売ってちょうだ~い」のキャッチフレーズの元に大量に回収され、主に東南アジア諸国へと輸出されている。 この映画では、現代の20代30代の日本人(物心を持ったとき、周りにはピアノがあった世代)にとってのピアノの存在とは何なのか、その一例を示す。 30才を超えた孤独な旅商人、関雲司の場合。
starlight
私は小さい頃から星を見るのが好きだった。けど、生まれ育った街は大都会というほど大きくはなかったけど、街の光は小さな星々を隠すには十分な明るさだった。どこかに遠出した帰り、親が運転する車の中で暇つぶしに星を探して見たけれど、目に飛び込むのは閑散とした街の明かりだけ。仕方なくうたた寝をしていたら、はっと目を覚ましたときに大きな星が目に飛び込んできた。けれどそれはただの街灯だった。でもいいや、これは星なんだと自分に思いこませて、街明かりの銀河系をじっと眺めていた。 人が都市を作ったとき、引き替えに星を失った。しかし、人は引き替えに、自らを星とした。その星達の、脈動や体温を映してみようと思った。
太陽は止まってくれない
本作は純粋に観客の皆様がお楽しみいただけるように作りました娯楽作品です。拙作ではありますが大変な苦労と楽しみを感じながら作りました。楽しんでいただければ幸いです。主演の山田陽さんには毎日毎日走っていただき、また誰も入ることの出来なかった神聖な自宅での撮影をも許可してくださいました。他作品にも引っ張りだこなあの方なしではこの作品は成立し得なかったことでしょう。アキラさん、ありがとうございました! 「日没のとき生き残っているのはただ一人・・・」 一人の泥棒が捕らわれた恋人を救うため街中を駆け巡る!忍び寄る殺し屋の影!そして明らかになる意外な真犯人とは?タイムリミットは日没!!
ハッピービギニング
本作は、二人の別れにはじまり、二人の出会いで終わる映画です。出来事を時系列とは逆順に見せていくという手法は、僕のオリジナルではないし、そのような手法による面白さがいくらか先に示されている以上、本作の面白さは僕が所有するところにはないのかもしれない。しかしそれでも映画として形にしようとしたのは、確認したいことがあったから。今の自分から考えれば、過去の自分はずいぶんと幼く、何も見えてはない。過去を振り返っては、もっとうまくできたんじゃないかと思ったりする。でもやはりそれらは今となってはどうにもならない。本作は「じゃあ今度からはうまくやろうじゃないか」という楽観的だがポジティブな決意表明の映画。
White Past ~白い過去~
ある日、平凡な主婦に掛かってきた電話は、忘れかけていた過去からのものだった…。 この作品は同名小説を勝手に映画化したものです。映像化するにあたってテレビドラマっぽい雰囲気を目指してみました。 私は五年ほど当サークルに所属していたにも関わらず、一回も映画を作ったことがなく、さすがに卒業前に作っておこうと思いました。とりあえず、開き直ってやりたいことを全部やってみました。今まで観たドラマや映画からも、色々パクって詰め込みました。この作品はメッセージ性や高尚な話もなく、とにかく観客の方が楽しんで頂けるものを目指したつもりです。観客の方が少しでもこの作品に没入感を感じて頂ければ幸いです。
無題
x軸回転後にy軸回転すると、ワールド座標には従わずローカルのy軸に従って回転する。この後にz軸回転すると、やはりワールド座標には従わず移動したローカルのz軸に従って回転する。y軸回転後にx軸回転すると、ワールド座標を軸に回転する。これはz軸回転後にx軸回転しても同様。z軸回転後にy軸回転しても、やはりワールド座標のy軸に従って回転する。つまり、x軸回転は完全にワールド座標を基準にしており独立、y軸回転はx軸回転にのみ依存する、z軸回転はx軸回転とy軸回転の双方に依存する、ということが言える。以上より、視点が回転したときのある物体の相対的な座標をあらわすマトリクスは……なんてことは重要ではない。
Sequence
この映画を作ろうと思い立ったとき、生きることとは何か、映画を作ることとは何かということについて真剣に考えてみようと思いました。シナリオを書きながら、それらは全てシークエンスという言葉に帰着されるのではないかという結論に至りました。しかしながら、この映画を作っている途中で作っている自分自身が何度もシークエンスを見失いそうになりました。それでも私と出演者、スタッフ達から紡ぎ上げられた映像と音像達は始まりと終わりを持った1つのシークエンス=映画として、観る人の前に姿を現すでしょう。そして一つ誇れることがあるとすれば、この映画は世界で坂本泰彦しか作り得ない作品となったということでしょう。
大日本煙草教団JT ~この素晴らしきdelight world~
☆この作品は自主規制によりR-18指定となっております。 一部青少年の鑑賞に不適切なシーンを含みます。ご了承ください。 煙草を吸うという行為は、古来より解脱と悟りを可能にする究極・最終秘儀でした。通常なら非常に難しいとされるクンダリニーの覚醒を一瞬にして実現し、あなたの解脱への道を短縮してくれます。 我ら大日本煙草教団JTでは、秘儀・瞑想などの伝授に加え、現代科学を駆使して信者の能力開発を飛躍的に進めています。また、煙草に含まれる様々な帯霊感物質が、現象界・アストラル世界・コーザル世界に働きかけ、肺からあなたの深い心・意識を浄化してくれます。 煙草の煙は無限の宇宙の根源的力を象徴するとともに、法輪の体得理解を表します。 我々は「真理の喫煙」により、世界全体の喫煙者らを幸福にする力を持っています。
羊と水或は対蹠点の錨(アンカー)或はぼんやりとした骨が見た或は組み紐B
長いタイトルですみません。この作品は、上映の日・プログラムによってタイトルと内容が違います。こんなわがままを許して下さった皆さん、ありがとうございます。「楽しそうに笑って」以外の指示をしない監督に附き合わされた出演者もお疲れ様です。観客の方は一回しか流されない各作品をしゃぶり尽くして下さい。最後に、監督を叱りつけておきながら二度寝までして遅刻しまくった助監督(途中からプロデューサー?)、あなたのお蔭です。僕は頑張りました。
楽しいピクニック
いつか見た映画に「楽しいピクニック」という映画があって、それは実験的というか、意味がわからないというか、変な内容の映画でした。けれども、それまではいろいろなものがあまりよくない感じだったのが、「楽しいピクニック」を見て以来、少しずつよくなっていったような気がするのです。その「楽しいピクニック」はこの映画とは別の映画なので、これを観たところでよくなるかどうかは分かりません。でも前向きに考えたほうがいいと思います。この映画に関してはとくに言うことがないのですが、これも「楽しいピクニック」なのだし、つまらないなあと思いつつ楽しく観ていただければありがたいです
日記の男
長年気脈を通じてよく知っているはずの隣人が、よく思い返したら本当に自分が思い描いてるような人物であったかどうか途端に信用できなくなる-記憶もその類のものです。日記は記憶の入口の一つですが、昔書いたことは大抵綺麗さっぱり忘れています。「何でこんな事を書いたのか」と不思議でしょうがないことも多々あります。しまいには「本当に僕がこれを書いたのか」と本気で疑ってしまうこともあるくらいです。 このように記憶というものは殆ど忘れ去られていくものです。ですがその忘れたはずのものが沢山集まってはっきりとした自我を作っていく。 じゃあ自分って一体なんなのだろう。 こういう疑問からスタートした映画です。
死と処女(おとめ)
シングル-8用フィルム「FUJICHROME R25N」「FUJICHROME RT200N」 販売および現像終了のお知らせ 平成18年4月25日 富士写真フイルム株式会社 お客さま各位 平素より弊社製品を御愛顧賜り、誠にありがとうございます。 さてこのたび、シングル-8用フィルム「FUJICHROME R25N」「FUJICHROME RT200N」を、平成19年3月の最終出荷をもちまして販売終了、ならびに平成20年9月をもちまして現像サービス終了とさせていただきます。(以下省略) 以上は富士フィルムから発表されたお知らせの冒頭部分である。 或いは。 この映画の切っ掛けである。
スター・ウォーズ エピソードIII シスの復讐'
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達観べぇ
主人公は友人を殺しました。隣室では♂と♀がSEXをしました。そして裁判という鵺的構造を借り、矛盾と対立を含みつつ、どこかで共通する二つの概念がアウフヘーベンされました。結局、僕達はさらなるアウフヘーベンを夢想し、あの世界へと旅立ちました。
猫背のなおしかた
「シンプルで淡々としながら、どこかひっかかる感じ」を目指し制作した短編です。5年もの長きに渡り、さまざまな現場で活躍してきたビデオカメラ、通称「ヨシダDV」による最後の映画。ヨシダDV、おつかれさまでした!
かりぱ
今回のSFのテーマ「借りる」にあからさまに沿った内容にしました。気持ち良さと気持ち悪さを感じてもらえれば幸いです。
落ちつくんだ・・・『素数』を数えて落ちつくんだ・・・2・・・3・・・5・・・7・・・8・・・11・・・ズキュウウゥン!